「ここで働かせてください」10年勤めた美容師をやめて奄美大島のホテルに転職した理由

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「ここで働かせてください」10年勤めた美容師をやめて奄美大島のホテルに転職した理由

奄美大島の北部に位置するばしゃ山村。ビーチが目の前にあり、島の人なら誰もが知る昔からあるリゾートホテルです。2023年4月からばしゃ山村で働き始めた千葉美沙季(ちばみさき)さん。

はじめて奄美大島に来たときから、ほかの場所とはちがう空気を感じたといいます。なぜ奄美大島だったのか。どうやって職場を見つけ、実際に働き、生活してみてどう感じているのかをお聞きしました。

はじめて来たときに感じた奄美の色

ー なぜ奄美大島に来ようと思ったんですか?

もともとひとり旅や島へ旅行するのが好きでした。石垣島、御蔵島、小豆島など行きました。2021年にはじめて奄美大島に来たのですが、空港に降りた瞬間に『はじめて来た気がしない。この風、なんか好きだな』と思ったんです。奄美大島の自然はエネルギッシュでパワーがある。ほかの島とはちがう、奄美の色が残っていると感じました。そのときには奄美大島に移住しようと決めていました。

ー 仕事はどうやって見つけましたか?

いきなりばしゃ山村のフロントを訪ねて、『ここで働かせてください』と言いました(笑)

ー 映画のような話ですね。

本当は別のホテルで面接を受けていたんです。奄美大島に来ることを考えて、調べていたら寮付きのホテルで人を募集しているのを見つけて。2022年にもう一度奄美大島に来て、採用の面接を受けたのですが、そこはご縁がありませんでした。

自分で島を周り、ばしゃ山村に来たとき、海が目の前にあってすごくいい雰囲気だなと感じて。フロントの人に『人手募集していないですか?』と聞いたら、募集していたので応募しました。

 

自分にとっての幸せはなんだろう

ー 今はどんな業務を任されていますか?

ホテルのフロント業務です。チェックイン、チェックアウト、予約管理などもしています。ばしゃ山村はレストラン、お土産屋もあり、ウェディングの会場としても利用されるのでいろんな電話がかかってきます。電話をとって、担当の人につなげています。

ー 島に来る前はどんな仕事をしていましたか?

美容師をしていました。神奈川県の横浜で10年。

ー 全然違う仕事を選んだんですね。不安はなかったのですか?

はい。10年やり切ったので、ちがうことをしたいと思っていました。美容師の仕事は、やろうと思えば島でもできます。最悪どうにかなると思い、新しいことに挑戦したかったんです。

ー 大きな転機になりましたね。

環境は180度変わりましたが、転機というより、今までの延長線上だと感じているので違和感はありません。10年間、美容師としてたくさんのお客さまと話をして、自分にとっての幸せとはなんだろうと考えるようになりました。

わたしは、自然と触れ合い、太陽や月を日々感じ、旬のものを食べ、島の方々と触れ合って伝統や文化を感じることが幸せだと思っていたので、島に来て良かったと思っています。

それに、いろんな人と関わり合ったこともキャリアだと思うんです。美容師のときに担当させていただいたお客さまが、すでに何人か奄美大島に旅行に来てくれています。積み上げてきたことや出会ってきた人はすべて財産で、つながっているんだと思います。

 

海でのんびりして旬のものをいただく幸せ

ー 仕事は楽しいですか?

はい、楽しいです。ばしゃ山村は、観光で来られる人にも地元の人にも愛されているホテルだなと感じます。毎年のように来てくれる人も多く、お客さまから奄美大島のことを教えてもらうこともあります。

先日、台風で帰れなくなったお客さまがいたんです。家族で来られていたのですが、出かけることもできなかったので、ずっと子どもたちとトランプをして遊んでいました。そしたら帰るときに泣いてくれて。来年の予約までしてくれたんです。奄美に来て良かったと思ってくれて嬉しかったですね。

ー それは嬉しいですね。休みの日はなにをしていますか?

休みの日には、海に行くことが多いです。打田原ビーチが好きなので、よく自転車で行きます。おにぎりとレジャーシートを持って、ビーチで本を読んで、昼寝して海に入って。ばしゃ山村の前の海に入ることもよくあります。

ー 生活していて大変なことはありますか?

特にありません。虫は苦手ですが、島にはいるだろうなと思っていました。今はホテルの寮に住んでいます。今まで実家を出たことがなかったので家族は心配していましたが、寮には6人くらい住んでいるので寂しくありません。台風のときはみんなでろうそくを持ち寄って過ごしていて、楽しかったです。

今は車がないので気軽に遠くへは行けませんが、ホテルの人が気遣ってくれて、買い物に行くとき乗せてくれます。食材をもらうこともよくあります。パッションやマンゴー、もずくをいただきました。旬のものを食べて、季節を感じられるのはすごく嬉しいです。

 

島の文化や歴史を楽しんでいきたい

ー これからどんなことをやってみたいですか?

クジラと泳ぎたいです。先日、イルカとは泳げたので、次はホエールスイムをしたい。横浜にいるときはヨガをしていました。ホテルの前のビーチでサンライズヨガやムーンライトヨガができたらいいなと思っています。ゆくゆくは車を買って、どこか古民家に住んで野菜など育ててみたいですね。

ー ばしゃ山村で働きたい人へアドバイスはありますか?

島の人に愛されているホテルなので、奄美を感じたい人におすすめです。自然も人も豊か。みなさん優しくて働きやすいです。移住者が少なく、島の人が多いところもわたしにとっては良かった。島の文化や歴史のことも教えてくれます。ホテルに植っているガジュマルひとつにも、誰が植えたかなどストーリーがある。そういう話に興味を持てる人には魅力的だと思います。

 

10年で積み重ねてきたものは、美容師の技術だけではありません。たくさんの人と出会い、自分と向き合い、なにが幸せなのかを考えてきた。だからこそ、千葉さんはばしゃ山村に突然訪れ『ここで働かせてください』と言えたのだと思います。

話す言葉の力強さから、千葉さんが本当に奄美大島の自然や文化を楽しんでいる様子が伝わってきました。