稼げる農家を増やしたい!自然の恵みをたっぷり受けた奄美大島の柑橘を育てる「元井農園」

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稼げる農家を増やしたい!自然の恵みをたっぷり受けた奄美大島の柑橘を育てる「元井農園」

奄美市住用町にある元井農園。国道沿いにある直売所には、冬になると生搾りたんかんジュースが売られています。たんかんをジューサーに入れて、その場で絞って味わうたんかんジュースは、島の人にも観光客にも大人気!「子どもたちが楽しそうに絞ってくれているのを見るのが嬉しい」と元井農園の元井雄太郎さんは言います。

たんかんは奄美大島の気候に適した果物

元井農園は昭和15年に山師だった雄太郎さんのおじいさんがはじめました。子どものころは休みのたびに手伝いをしていた雄太郎さん。「友だちは遊びに行ってるのに、自分だけは山に行くばっかり。泣きながら石拾っていたほどイヤでした」高校卒業後はダイビングの仕事をしようと島を出ましたが、1年ほどで退職。「根性がなくて辞めました。働いていたところの海を心の底からきれいと言えなかったんです。奄美の海のほうがだんぜんきれいでした」島に戻ってきてあらためて農業の手伝いをすると、ひとつひとつの作業がどうつながっているかが分かるように。それから農業がおもしろいと感じ、本格的に元井農園を手伝うようになりました。

現在、元井農園で扱っているのは「たんかん」と「津之輝」という柑橘類です。たんかんは屋久島、種子島、奄美大島、徳之島で主に収穫されており、酸味が少なく、濃厚な甘さが特徴。本土では積算温度が足らず水っぽくなってしまうため、奄美大島の気候に適したフルーツと言えます。「津之輝」は糖度が高く、香りが豊かなみかんです。栽培はたんかんに比べて難しいですが、とても人気で、すぐに売り切れてしまうほど。

「99%個販で売っています。贈答用やおみやげで買われることが多く、リピートしてくださる人も多いです。台風がきたときは、心配したお客さんから手紙をもらうこともありますね。そういったことが励みになって続けられています」奄美大島の農家にとって、台風は大敵。とくに津之輝は、台風がくる10月ごろに実がなります。実の重さで木が根こそぎ倒れてしまうことも。だからこそ、収穫のとき以外は支柱を立てたり、防風林を育てたりして、畑を守ります。ほかの農家の方とも積極的に情報交換をし、より良い奄美大島産の果物ができるよう、日々研究を重ねています。

海外からも注目されている奄美大島のフルーツ

元井農園の仕事は、収穫、剪定、施肥、草刈り。秋から春にかけては収穫の時期なので、体力仕事です。毎日たんかんでいっぱいのかごを運搬車に乗せ、運搬車から2トン車に乗せる。そんな作業を繰り返し、1日で延べ20トンくらいを運びます。元井さんはひと月で8キロも体重が落ちたこともあるほど。収穫がない時期は、施肥、草刈りなど樹園地管理をします。目標は安定管理と安定生産。台風が来ても、毎年安定した量を収穫できるような農園を目指しています。夏場は朝7時から、冬場は7時半から作業開始。太陽がのぼると同時に活動を始めるので、自然と生活リズムが整います。

「農業はやりがいしかありません。近年、奄美大島のフルーツは海外でも注目されています。販路はどうにでもなる。農地と経験さえあればどうにかなると思います。自分でなにかをやりたい人、それでご飯を食べていきたいと思っている人と一緒に仕事がしたいです」と元井さんは話します。奄美大島で農業をする魅力は、自然の力を借りて農業ができること。気温が高い奄美大島では、自然のあたたかさで育てることができます。その分、台風や気温の変化で出来が大きく左右されてしますので大変ではありますが、おいしくできたときの感動はひとしおです。

子どものころに見ていたオレンジロードの復活を

これからは農家の育成もしていきたい元井さん。島では仕事が少ないと言われますが、農業でも十分稼げることが示すことができれば、島に戻ってきたいと思う若者が増えるのではないかと考えています。島は今、荒廃放棄地だらけ。しかし、借りようと思ってもマッチングがうまくいかないといった問題もあります。せっかくやる気を持って農業に取り組もうとしても、畑が見つからなくて断念することも。複雑な問題なので個人でできることは限りがありますが、元井さんは行政にも働きかけ、よりスムーズにマッチングができないかと考えています。元井さんは、すでに実績のある農家が農地を一気に借りてしまい、やる気のある若者に貸せるようになると最高だと言います。

かつて、住用の国道沿いにはたんかん畑がたくさんありました。シーズンになるとオレンジ色の実がたくさんなっていて、オレンジロードと呼ばれるほど。「オレンジロードを復活させたいですね」元井さんは無邪気に笑いながら話してくれました。奄美大島ならではのフルーツを世界に。農家を志す人は、元井農園で修行してみてはいかがでしょうか。