大島紬の織元が設立した伝統文化を伝えるホテル
大島紬の織元が「伝統文化の発信拠点に」という思いから2005年に設立したホテル「ティダムーン」。ホテルの2階に大島紬美術館があったり、向かいに大島紬の資料館があったり、エレベーターの扉が大島紬の柄になっていたりと、ホテルのいたるところで大島紬を知ることができます。スイートルームは、大島紬だけでなく、奄美大島で多くの作品を残した画家、田中一村の作品をモチーフにした部屋も。
「ティダムーンの景色と料理は、友だちに勧めたいほどです」と話すのは、従業員の安原真里奈さん。エントランスに入ってロビーの向こうに広がる海を見ると、チェックインを忘れて写真を撮りたくなるほど。ロビーから見て左側には、昔から島の人たちにとって大切な「立神」と呼ばれる海に立つ岩が見えます。
そんな海を眺めながらの食事は、島の食材をふんだんに使い、体の中から健康になることを願って考案されています。朝食を担当するのは、大島紬の織子さん。島で昔から食べられているものを味わってほしいという思いから、島の人たちが毎朝心を込めてつくってくれています。「外見の美は大島紬で、内面の美は食事から」奄美大島ならではの美しさを体験できる食事です。
客室の下にはプールがあり、さらに進むと誰もいないプライベートビーチ。山と海にはさまれ、奄美大島の雄大な自然を感じることができます。資料館では実際に大島紬を織っているところを見学できたり、泥染や藍染の体験ができたりします。自然、文化、島で暮らしていた人々の生活を感じることができるティダムーン。安原さんは「ホテルだけでなく、奄美大島のファンになってくれて、また帰ってきてくれるのが嬉しいです」と言います。
スタッフが居心地良く働ければ、良い接客ができる
業務内容はフロント業務、ルーム清掃、レストランで朝食や夕食の配膳などです。勤務帯は早番、中番、遅番に分かれており、早番は7時から16時、中番は10時から19時、遅番は13時から22時です。たとえば、9時から11時はチェックアウトの対応、終わったら事務作業などを行い、15時からチェックイン対応に入ります。
「2年前に転職してティダムーンで働いていますが、わたしが働いてきた職場の中で一番スタッフ同士が仲が良く、風通しのよい職場だと思います。立場が上の人にも意見が言いやすいです」と安原さんは言います。お客さまからのアンケートでも、スタッフ同士の仲の良さを褒められたことがあるほど。
マネージャーの太田香織さんは、なるべく毎日スタッフ全員に声をかけるようにしています。「スタッフにとっても、お客さまにとっても、居心地の良い場所をつくりたいと思っています。楽しく笑顔でいたら、そのままの気持ちでお客さまにも接することができるはず。機械的ではない接客を目指しています」
毎日朝礼では、お客さまの事案を共有しています。問題が起きたら、どうしてそうなったのか、どういう判断でそうしたのか、スタッフそれぞれから話を聞いて状況を把握します。誰かを責めるのではなく、問題から次の方針を一緒に考える。一方的ではなく、どんな立場の人の意見も正しく汲むように心がけているところが、働きやすい環境につながっています。
大島紬を織るように、チームワークでホテルをおもしろく
たまに、ホテルの清掃をしているとお客さまからの手紙をいただくことがあります。「奄美大島とても楽しかったです」お子様からの似顔絵をもらうことも。長年勤めているスタッフの中には、そのスタッフに会いにくるためにリピートしてくれるお客さまもいます。
お客さまは、さまざまな目的で奄美大島に来られています。家族で楽しみたい人、新婚旅行で来ている人、ひとりでゆっくりしたい人。お客さまの目的に合わせて、どんな提案をすれば喜んでもらえるか。マリンアクティビティを楽しむお客さまはタオルが必要かもしれない、赤ちゃんを連れている方があって嬉しいものはないか。ただ鍵の受け渡すだけではなく、ひとりひとりに合わせて接客し、奄美大島を好きになってもらうことが仕事のやりがいです。
現在、ティダムーンではいろんな人が働いています。島出身の人やIターンの人だけでなく、韓国、ベトナム、スリランカの人も。「大島紬は、多くの職人が関わることでひとつの作品を仕上げています。ティダムーンでも同じで、いろんな人の能力や個性を発揮してもらい、おもしろいホテルになればいいと思っています」と太田さんは話します。
ティダムーンの仕事は、奄美大島の伝統文化を伝え、ファンになってくれるお客さまを増やすこと。一緒に魅力的なティダムーンをつくっていける仲間をお待ちしています。