奄美大島と加計呂麻島の二拠点生活をする菅野審也さん。移住の予定はなかったですが、ご縁がつながり奄美大島に移住することに。内地の企業に所属し、リモートで仕事をした後にコワーキングスペースの立ち上げに関わりました。「奄美大島はちょうど良い規模」と話す菅野さん。奄美大島に移住するまでの経緯や、島での生活についてお話を聞きました。
気がついたら奄美大島に移住することに
ー なぜ移住しようと思ったのですか?
はじめは移住するつもりなんてまったくありませんでした。ただ、パートナーがずっと奄美大島、特に加計呂麻島が好きで、いつかは移住したいと言っていて。二人で初めて一緒に旅行したのも加計呂麻島で「加計呂麻島が合わない人とは一緒にいられない」と言われるほどでした(笑)
はじめて訪れたときから私も加計呂麻島が好きになりました。あるとき、SNSで「ジョブセンバ」という奄美の求人イベントを見つけたんです。東京で開催された、奄美大島の企業と移住したい人のマッチングするイベントです。どんな企業が参加しているのか興味があったので参加してみました。
そうしたら、たまたま知っている会社が参加していたんです。しかも、ちょうど奄美大島にオフィスをつくるタイミングで。「遊びに行きます」と言って、その年のうちに本当に会いに行ったんです。当時、奄美オフィスに配属されている人は2人だけで、ひとりは支社長、もうひとりは島出身のデザイナーで、島外から移住してきた社員はゼロ。「移住社員第1号になれる!」というのも決め手として大きかったです。
当時勤めていた会社を辞めて、2020年5月に転職。2ヶ月は東京の本社で研修をして、7月に奄美大島に移住しました。移住するつもりなんてなかったのに、トントントンと物事が進んで、気がついたら移住していたような感じです(笑)
コワーキングスペースを起点にオンラインコミュニティを運営
ー 島に来てからはどういう仕事をしていますか?
奄美大島に住んでからは、動画事業の立ち上げに関わり、主に企業のYouTubeチャンネルやTikTokの活用のための研究開発と案件を担当していました。もともと動画プロデューサーをしていたので、その経験を活かすことができました。クライアントは内地の企業ばかりで、会社のメンバーともクライアントとも、リモートで打ち合わせをしていました。
ただ、せっかく奄美に住んだのに、少し島との距離を感じていました。もっと地域に根ざした活動がしたいな、と。そこで、全国からのフルリモートという働き方を採用している地域創生を目指す会社を見つけ、転職しました。
転職した会社はオンラインコミュニティアプリを提供しており、コミュニティを運営する企業や団体のサポートを行ってきました。主に、官公庁や地域金融機関、さらには企業がもつネットワークをオンラインコミュニティ上に展開していく仕事で、どのように参加者同士のつながりを作り、共創を生むかクライアント担当者と日々話し合っていました。ちょうどコロナ禍で、オンラインを活用する動きが強くなったタイミングでした。
この仕事を2年ほどしていると、オンラインコミュニティはすごく可能性があると感じました。オフラインの場に比べて、時間や物理的な距離を超えられるオンラインの利点は、離島である奄美大島ではとても有利に働くと考えています。Living AMAMIはオープン当初から、オンラインコミュニティを併設することにこだわっています。奄美にも旅行や帰省でたくさんの人が来てくれるけど、離れるとコミュニティから離れてしまう。オンラインであればどこにいてもつながることができます。
Living AMAMIの運営以外は、東京の企業の手伝いをしたり、知り合いから頼まれて資料やサイトをつくったりしています。加計呂麻島ジビエ研究会の販路拡大も手伝っています。
奄美大島だからこそ始められることがある
ー 家はどうやって探しましたか?
家探しは少しだけ苦労しました。最初は南部の古仁屋で家を探していましたが、保証人になれる人を探している間に別の人に決まってしまって。
結局、当時の職場にも行きやすい名瀬で家を探しました。ネットで探して内覧もせずに決めましたが、結果よかったなと思っています。24時間開いているスーパーがあったり、徒歩圏内で必要なものは揃うし、Amazonも3〜4日で届くので、それまでの生活とほとんどギャップがなかったです。
移住して3年くらい経ってから加計呂麻島にも家を借りました。ずっと友人に「家ないかな?」と聞いていたら「加計呂麻島で募集があったよ」と。なので、今は平日は名瀬、週末は加計呂麻島の二拠点生活です。
ー 実際住んでみてどうですか?大変なことはありますか?
奄美に住んで、やりたいことがどんどん出てきました。やりたいことがあり過ぎてたまにパニックになっているくらい(笑) ヨットを安く譲ってもらったので海に出たり、DIYで家具やウッドデッキを作ってみたり。
奄美は良い規模感だなと感じています。インフラは整っていますし、人口も約6万人いるため、島内で完結できることもたくさんあります。一方で、新しいビジネスや文化的な取り組みに挑戦できる余白もあります。都市部で今からコワーキングスペースを始めようと思っても、莫大な初期費用がかかりますし、他との差別化で大変だったと思います。奄美だからこそ、小さく始められているような気がします。
住んでいて困ったことはあまりありません。強いてあげるなら、ネットで買い物をすることが多いのですが、実物を見てから買えないので、色やサイズを間違って注文してしまうことがあります。あとは雨が多いので、めちゃくちゃカビます。怖くなってジャケット、靴など革製品はすべて東京に送り返しました。
それと、私もパートナーも食べることが好きなんですが、日曜日が休みの店が多いのと、夜遅くまでやっている店が少ないのでよく店選びに苦労しています。
だからこそ自分たちでイベントをしているのかも。島外からシェフを招いてポップアップイベントを開催したり、島内のソムリエとコラボしてワインを楽しむイベントを開催しました。ないなら自分たちで作ってしまおうと思っていますね。
ー 移住したい人に向けてアドバイスはありますか?
移住したいなら、いったん来てしまうのがいいと思います。最悪、合わなかったら帰ればいいかな、くらいの気軽さで。最初から「これやりたい!」と目標を掲げて移住してもいいですが、生活を楽しみながら見つけていければいいと思います。最初からギラギラした状態でなくて、地域になじんでいくなかで協力してくれる人が出てくると思います。
それと、二段階移住がおすすめですね。最初はコンビニやスーパーが充実している名瀬でうまくなじみつつ、そこからいろんな場所に通いながら理想とする姿に近づいていくのが良いと思います。
私も、最初から加計呂麻島に行ってたら違っていたかもしれません。そういう意味でも奄美はいろんな環境を選べるので、移住しやすいと思います。